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(1)9月6日、WHOは、ジカウイルス感染症に関し、性行為感染の防止に関する暫定ガイダンスを更新し、ジカウイルスの主たる感染経路は蚊媒介であるとしつつ、最近の調査結果に基づき、性行為による感染がこれまで考えられていたよりも一般化しているとの見解を示しました。調査結果からは、ウイルスが精液の中により長く残存することも分かっており、WHOは、流行地域から帰国した全ての男女に対し、症状の有無にかかわらず、帰国後も最低6か月間はコンドームを常に使用するなど安全な性行為に努めるか、性行為を控えるべきとの勧告を行いました。また、
WHOは、妊娠中の女性に対し、ジカウイルス感染症の流行地域に渡航しないよう呼びかけています。
(2)WHOは、2016年2月1日、ジカウイルス感染症に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会第1回会合を開催し、小頭症及びその他の神経障害の急増が「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC、Public Health Emergency of International Concern)」に該当することを宣言しました。9月1日に開催された第4回会合においても、感染拡大が継続していることを指摘するとともに、ウイルスに関するこれまでの理解と調査結果の間に大きな隔たりが見られることから、ジカウイルス感染症とそれに関連した先天性及び神経障害の発生が引き続きPHEICに該当するとの見解を示しました。
(3)以下2.のとおり、引き続き、各地でジカウイルス感染症が流行しています。特に影響の大きいブラジルでは、2015年11月から2016年10月第3週までに、9,862例の小頭症の疑い例が報告され、検査結果が確定した6,827件のうち2,063件について、先天性小頭症及び(又は)中枢神経異常と判定されています
(ブラジル保健省発表)。
(4)つきましては、流行国・地域への渡航・滞在にあたっては十分に注意してください。特に、妊娠中又は妊娠を予定している方は、流行国・地域への渡航・滞在を可能な限りお控え下さい。やむを得ず渡航・滞在する場合には、渡航先の在外公館等からの最新の関連情報を入手するとともに、主治医と相談の上、厳重な防蚊対策を講じるなど以下3.も参考に十分な感染予防に努めてください。 |
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2.ジカウイルス感染症の発生状況 |
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(1)海外での発生状況
WHO等によれば、2015年5月以降、以下の国・地域でジカウイルス感染症の感染例が報告されています。最近では、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム及びマレーシアにおいて、流行地域への渡航歴のない人にジカウイルス感染が確認されるなど、アジア地域でも感染地域が広がっています。
○中南米地域
アルゼンチン、アンティグア・バーブーダ、バルバドス、ベリーズ、ボリビア、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、キューバ、ドミニカ共和国、ドミニカ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、グレナダ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、ニカラグア、パナマ、バハマ、パラグアイ、セントビンセントグレナディーン諸島、セントルシア、セントクリストファー・ネーヴィス、スリナム、トリニダード・トバゴ、ベネズエラ、ペルー、英領(アンギラ、タークス・カイコス諸島、ケイマン諸島、バージン諸島)、フランス領(グアドループ、サン・マルタン、ギアナ、マルティニーク及びサン・バルテルミー島)、オランダ領(アルバ、ボネール、キュラソー、シント・マールテン、シント・ユースタティウス島及びサバ島)、米領(バージン諸島及びプエルトリコ)
○アジア・大洋州地域
インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、モルディブ、米領サモア、マーシャル、サモア、トンガ、パプアニューギニア、フランス領(ニューカレドニア)、フィジー、ミクロネシア(コスラエ州)
○アフリカ地域
カーボヴェルデ、ギニアビサウ
○北米地域 米国フロリダ州の一部地域
(2)国内における感染者の発生
日本国内ではこれまでに、海外で感染し、帰国後に発症する輸入症例が12例(そのうち今回の中南米における流行後は9例)報告されています。
現在日本での流行はありませんが、日本にはジカウイルスの媒介蚊であるヒトスジシマカが秋田県及び岩手県以南のほとんどの地域に生息していることから、万が一流行地域でウイルスに感染し発症期にある人が、国内で蚊に刺され、その蚊が他の人を吸血した場合に、国内でも感染者が発生することがあり得ます。国内のヒトスジシマカの活動時期は5月下旬から10月下旬頃までと言われており、流行地域からの帰国者は、症状の有無にかかわらず、帰国後も少なくとも2週間程度は蚊に刺されないための対策を行ってください(以下3.(4)参照)。
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3.ジカウイルス感染症について |
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(1)感染経路
ジカウイルスを持ったネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることで感染します。感染した人を蚊が刺すと、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊に他の人が刺されると感染する可能性があります。また、母胎から胎児への感染(母子感染)、輸血や性交渉による感染リスクも指摘されています。こうしたリスクを考慮し、流行地域に滞在中は、症状の有無にかかわらず、性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えるようご注意ください。また、流行地域から帰国した男女は、症状の有無にかかわらず、最低6か月間、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えるようにしてください。なお,性行為による感染は、男性から女性パートナーのみならず,女性から男性パートナーへの感染例も報告されています。
(2)症状
ジカウイルスに感染してから発症するまでの期間(潜伏期間)は2~12日であり、主に2~7日で、およそ2割の人に発症すると言われています。発症すると軽度の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、斑丘疹、疲労感、倦怠感などを呈しますが、一般的にデング熱やチクングニア熱より軽症と言われています。
(3)治療方法
現在、ジカウイルス感染症には有効なワクチンや特異的な治療法はなく、対症療法が行われます。ジカウイルス感染症が流行している地域で蚊に刺された後に発熱が続く、または発疹が出るなど、ジカウイルス感染症を疑う症状が現れた場合には、医療機関への受診をお勧めします。
(4)予防
ジカウイルス感染症には有効なワクチンもなく、蚊に刺されないようにすることが最善の予防方法です。これらの感染症の発生地域に旅行を予定されている方は、次の点に十分注意の上、感染予防に努めてください。また、症状の有無にかかわらず、帰国後少なくとも2週間程度は忌避剤を使用し、蚊に刺されないための対策を行ってください。
●外出する際には長袖シャツ・長ズボンなどの着用により肌の露出を少なくし、肌の露出した部分や衣服に昆虫忌避剤(虫除けスプレー等)を2~3時間おきに塗布する。昆虫忌避剤は、ディート(DEET)やイカリジン等の有効成分のうちの1つを含むものを、商品毎の用法・用量や使用上の注意を守って適切に使用する。一般的に、有効成分の濃度が高いほど、蚊の吸血に対する効果が長く持続すると言われている。
●室内においても、電気蚊取り器、蚊取り線香や殺虫剤、蚊帳(かや)等を効果的に使用する。
●規則正しい生活と十分な睡眠、栄養をとることで抵抗力をつける。
●軽度の発熱や頭痛、関節痛や結膜炎、発疹等が現れた場合には、ジカウイルス感染症を疑って、直ちに専門医師の診断を受ける。
●蚊の繁殖を防ぐために、タイヤ、バケツ、おもちゃ、ペットの餌皿等を屋外放置しない、植木の水受け等には砂を入れるなどの対策をとる。
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4.流行地域からの帰国時・帰国後の対応(日本国内の検疫について) |
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蚊に刺され心配な方や発熱等の症状のある方は、帰国された際に、空港の検疫所でご相談ください。
また、帰国後に心配なことがある場合は、最寄りの保健所等にご相談ください。なお,発熱などの症状がある場合には、医療機関を受診してください。 |
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5.その他の蚊媒介感染症(デング熱、チクングニア熱)への注意 |
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ジカウイルス感染症が流行している地域では、同様に蚊を媒介とした感染症であるデング熱やチクングニア熱の発生も例年報告されており、注意が必要です。感染経路や症状についてはジカウイルス感染症と類似しているため、上記3.を参考に蚊に刺されないよう予防に努めてください。特に、デング熱は、重症化すると皮下出血や肝腫大等を引き起こし、デング出血熱又はデングショック症候群と呼ばれる重篤な病態を示し、死に至る場合もあります。流行地域へ渡航・滞在される方は予防対策の励行を心がけてください。
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(参考情報)
○厚生労働省HP(ジカウイルス感染症について)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000109881.html
○世界保健機関(WHO):Microcephaly/Zika virus(英文)
http://www.who.int/emergencies/zika-virus/en/
(問い合わせ窓口)
○外務省領事サービスセンター
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902、2903
(外務省関連課室連絡先)
○外務省領事局政策課(海外医療情報)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)5367
○外務省海外安全ホームページ
http://www.anzen.mofa.go.jp/(PC版)
http://www.anzen.mofa.go.jp/sp/index.html(スマートフォン版)
http://m.anzen.mofa.go.jp/mbtop.asp(モバイル版) |