邦人男性2人を人質に、2億ドル(約236億円)もの身代金を要求したイスラム過激派組織「ISIL」。最初の映像が公開された1月20日以降、2人の開放に向け最大限の努力が尽くされる中、1月25日に湯川遥菜さんが殺害されたとみられる画像が、2月1日にはジャーナリストの後藤健二さんが殺害されたとみられる画像がインターネット上に公開されました。
今回の事件では、今後も日本人をテロの標的とすると挑戦的で不気味なメッセージが発せされたことで、不安を感じられている方も多いのではないでしょうか。確かにマレーシア国内においてもISILに賛同する一部のマレーシア人等がおり、その影響は少なからず受けていると言わざるを得ません。闇雲に怖がるのではなく、正しい情報を得て、取り得る措置を時々の情勢に応じて講じることが大切です。
(1) マレーシア国内
2014年中、当館管轄内においてテロ・爆弾事件は報告されていませんが、2013年2月下旬以降、マレーシア国内各地で75人のマレーシア人がテロ関連容疑で逮捕され、少なくとも71人のマレーシア人が、ISILの活動に参加すべく、シリア、イラク北部地域へ渡航したと報じられております(2015年3月末現在)。これら逮捕者の中には、ISISへの支持を表明するアルカイーダ系テロ組織ASG(アブサヤフグループ)との関係が指摘されている者もいるほか、マレーシア国内にある外資系のビール工場やパブ、ディスコ等を標的としてテロを計画中であったと供述しているグループがいたことも報じられています。また、これら逮捕者を職業別に見ると、大学生、主婦、建設現場労働者、建築技師、会社役員、料理人、グラフィックデザイナー、政府幹部職員やマレーシア海軍関係者等幅広い業種に及んでいるほか、年齢別に見ても20代から40代と幅広く分布しており、今後も職業や年齢を問わず、イスラム過激派思想に感化されるマレーシア人の拡大を懸念する報道もあります。
また、治安当局により取締り・監視活動の結果、渡航制限が厳しくなると、イスラム過激派思想に傾倒した者が、理想とするイスラム国家を東南アジアに形成すべく、マレーシア国内でテロを敢行する可能性を指摘する専門家もおり、今後とも治安情勢に関する警戒が必要です。
○ その他参考1
2月10日、マレーシア内務相は、ISILがマレーシア華人をはじめとする富裕層を誘拐や銀行強盗を計画しているという情報を入手していると発表しました。
○ その他参考2
2月16日、マレーシア国内の裁判所を対象とした襲撃予告の映像がインターネット上に公開されました。 一方、近年マレーシア国内では、イスラム過激派によるテロ事件は発生しておらず、マレーシア治安当局もISILの活動へ参加を企図するマレーシア人の渡航を未然に阻止したり、東南アジア周辺諸国からの参戦企図者が、マレーシアをトランジットポイントとして利用とすることを防止すべく、取締りと監視活動を強化しており、現時点、テロ事件に関する具体的脅威情報は把握されていません。また、在留邦人の安全確保のため、警戒強化を大使館からマレーシア国家警察にも要請していますので、日本人を狙ったテロ事件が今すぐ発生する情勢にあるとまでは考えておりません。ですから、過度にご心配頂く必要はありませんが、今後の情勢を注視して、不測の事態に備えていくという心構えは、日頃から持って頂くことが大切です。
(2) タイ南部(マレーシアとの国境付近)
2004年1月以降、マレーシアと国境を接するタイ南部では、イスラム過激派による爆弾事件や襲撃事件等が続発し、6,000人異常が死亡したと報じられています。国境地域の両国国民は頻繁に国境を往来しており、タイ(暫定)政府は、マレーシア国内にイスラム過激派が潜伏している可能性があると指摘しましたが、マレーシア政府はこれを否定しています。これまでマレーシア国内で大半部のイスラム過激派に関係した暴力事件は発生していませんし、ISILとタイ南部のイスラム過激派グループの関連を示す具体的な情報は、把握されておりません。
しかしタイ南部地域に対しては、外務省危険情報「渡航の延期をお勧めします。」等を継続して発出しており、どのような目的であれ、渡航を延期するようお勧めしているほか、現地に滞在している邦人の方々に対しては、退避の可能性の検討や準備を促しております。詳しくは下記の外務省海外安全ホームページ(危険情報・スポット情報・広域情報)をご覧ください。
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo.asp?id=007#ad-image-0