鹿屋総領事からのご挨拶

令和3年3月17日
在ペナン総領事 鹿屋真一郎
離任のご挨拶
 
この度帰朝の命を受け、ペナンを発つこととなりました。また、今回は定年のための帰国となりますので、3月末には定年退職します。ペナンにおきましては、3年弱の任期となりましたが、ペナン在住の皆様ならびに北部マレーシア各州の皆様には大変お世話になりました。
 
これまで、海外の任地としては英国、サウジアラビア、ノルウェー、ロシア(2回)、米国(ワシントンDC)の5か国に勤務し、マレーシアは6か国目でした。私は、出張ではアジア各国に来たことはありますが、着任しての勤務は全く初めてでしたので、家内ともども慣れないことが多く最初はいろいろと戸惑いました。まずは、食べ物が辛く、その上、非常に甘いものも多かったので、血糖値が上がってしまい、当地の病院で治療を続けました。かなり強力な薬で糖分を排出したようなので、体重が8kgほど減ってダイエットができたという思わぬ「副反応」が生じました。
また、1年中気候がほとんど変わらず寒暖の差が全くないというのも初めての経験でした。これまでサウジのように暑い国やロシア・ノルウェーのように寒い国などありましたが、いずれも少なくとも夏と冬の差はありました。当地は、1年中冷房が必要なほど暑くまた湿度も高いですが、一方で、暖房や秋冬物の服装が不要というのも意外に身軽に暮らせて良いと思いました。ただ、季節による節目がないので、いろいろな出来事がいつ起きたかを思い出すのが難しく感じました。日本では季節と密接に結びつくので、出来事がどの季節に起きたかが記憶に残り覚えやすいのですが、ペナンは違いました。
 
2020年は、新型コロナウイルスという全世界に蔓延した感染症(パンデミック)のために、世界中の人々の働き方や生活の仕方に大きな変化をもたらしました。ペナンも例外ではなく、昨年3月に発令されたMCO(活動制限令)により、まずは経済活動と地域間の移動と学校閉鎖などが一斉に起こり、感染防止のためとはいえ社会活動が麻痺しました。その後、5月6月頃まで徐々に工場や農林水産業といった生産活動は復活していきましたが、観光・スポーツ・映画等エンタメ・飲食・ホテル等宿泊といった業界は大きなダメージを受けたままとなっております。昨年10月頃からは、一旦は収まった感染者が再び増加し、1月に入って再度MCOが発令されたのは皆様ご存じのとおりです。
日本でいういわゆる「3密」を回避するために、マレーシアにおけるSOP(標準的行動規則)を守らなければならず、これが現在のニューノーマルになっておりますが、我々のように人と会うこと、多くの人が集まるイベントに参加することなどが仕事となっている人間には非常に大きな障害となっております。早くもMCOが発令されて1年が経過しますが、いつもの年であれば、大勢の人々が集まり日馬の人々の交流を深めることができる盆踊り大会やよさこいパレード、アニメ祭り、といったことがすべて中止となってしまったことは残念でなりません。また、コロナ以前は、イポーやアロースター、コタバルといった管轄地域に何度も出張に行けましたが、MCO期間中は州間の移動は禁止されております。
このように、昨年から1年間は外交・領事活動が著しく制限される中で、いかにして日馬間の人的な関係構築を充実させられるか、あるいは邦人保護のための活動ができるかといったことに腐心してきました。本当に想定外のことの連続でしたので、どれだけのことができたかは判断が難しいですが、できる限りのことはしてきたつもりです。
 
1957年の外交関係樹立以来、マレーシアと日本は友好的な関係を続けてきました。来年は東方政策40周年を迎えます。KLの大使館が中心となって40周年記念活動を行うことになる予定ですが、当地でも新たな10年を迎えるにあたり、マレーシアとの関係強化を図っていく所存です。
今年は間違いなく新型コロナウイルスによる被害から立ち直る回復の年になると思います。ただし、回復の速度は今後のワクチン接種の広がりなどにも関係してくると思われますが、意外に時間がかかるかもしれませんし、また、何かのきっかけで急速に回復が進むかもしれません。私は日本に戻りますと外務省を退職することになりますが、日本においてもマレーシアの新型コロナウイルスからの回復を今後とも見守り続けたいと思います。
後任の着任はやや間が空いて、おそらく5月以降になると思われますが、引き続き当館の活動にご理解ご協力をいただけると幸いです。
 
令和3年3月
在ペナン総領事    鹿屋真一郎